そういう夏

風鈴の音が蝉の声を中和する昼下がり、気怠そうに横たわっている柴犬を愛でながら、ソーダ味のアイスを咥えている。汗は流れるけど、なぜだか不快ではない。

「スイカ食べる?」

その声に振り返ると、綺麗に切り分けられたスイカを真っ白なお皿に乗せたキミがいた。「食べる」と答えると、額に滲んだ汗を拭いながら、ボクの隣に腰掛ける。夏仕様の座敷わらしと言われれば何も違和感がない風貌のキミは、この縁側とよく似合っていた。

溶けて崩れ始めたアイスを一気に頬張って、スイカを一切れ手に持つ。合わせるように、キミもスイカを持って、一口囓る。シャリ、という音が心地いい。

「もう帰るんでしょ?」

「うん」

別れは毎年のことだった。だから、特別悲しむことはない。キミも東京に来ればいいのに、とボクは言った。去年も言ったし、一昨年も言った。キミは決まって、行けるといいね、と答える。

「祭り、一緒に行かない?」とボクは言った。「意地悪ね」とキミは言った。「私はここから出られないのに」

シャリ、という音を最後に、気付けばキミはもういなかった。また来年、お盆休みに。

努力

心が動いたので文章を書こうと思う。言語化しようとして書き言葉でも話し言葉でも上手くいかなかったので、このブログ自体も公開されない可能性がある、とここに書いておく。 

AKB総選挙をインターネット越しに見た。若手が結婚発表をしたり、古株が引退発表をしたり、クイーンが3連覇したり、とまあそんなところだと思う。結婚発表の賛否についてはもう特筆する必要もないと思うので書かないが、今日の渡辺麻友の表情は、心のどこかに重く響いた。素晴らしいとかいう言葉で形容するのはおかしいけど、そう感じた。

12年間アイドルを続けて、神7であり続けて、大事なイベントが悪天候で中止になって、卒業を発表する総選挙で話題を取られて、1位にもなれなくて、それでも作った笑顔の写真がTwitterに投稿されていた。何よりも美しい笑顔に見えた。この上ないほどの努力を重ねた人間にしか生まれない表情だと思う。ぼくが言えることじゃないけど、幸せになってほしいと思った。努力して、才能もあって、真面目を貫いた人間の最高潮がそれでいいはずがない。今よりもっと幸福な未来があればいいなと思う。

消失

どこにも向けられない感情が湧いてきたので書き記しておく。すぐに非公開にするかもしれないけど。

 

近所で大学の先輩が死んだらしい。名前も知らない人だったけど、たぶん何度かすれ違ったことくらいはある人だと思う。

今朝家に来た友人から聞いて調べたけど、誰も見ないような「県民ニュース」に載っていた程度だった。友人から聞いた以上の情報は載っていなかった。ローカルのニュース番組でも報道されたらしいけど、どうせ知らないアナウンサーがふざけた無表情で読み上げただけなんだろうな。

人生これからって若者が死んだのにこんなものなんだなあ、と思う。ぼく自身、あまり接点のない人だから悲しむとかはないけど、もし自分が死んで、周りの少ない人間が雑に悲しんで、それで終わりっていうのは虚しいな。人間割とすぐ死ぬのはそろそろ理解してきたけど、おいそれとその辺に死が転がってるのはいい気分じゃない。20年以上頑張って生きてきた人間が意味もなく適当に死んで、それで終わりみたいな物語を誰が読みたいんだろう。神様なんてやっぱいないんじゃないか。いるとしてもバカで、情緒もクソもなくて、ジャンプの佳作にも選ばれないような作家がやってんだろうな。救いもないし、売れもしないぞ、オマエ。