そういう夏

風鈴の音が蝉の声を中和する昼下がり、気怠そうに横たわっている柴犬を愛でながら、ソーダ味のアイスを咥えている。汗は流れるけど、なぜだか不快ではない。

「スイカ食べる?」

その声に振り返ると、綺麗に切り分けられたスイカを真っ白なお皿に乗せたキミがいた。「食べる」と答えると、額に滲んだ汗を拭いながら、ボクの隣に腰掛ける。夏仕様の座敷わらしと言われれば何も違和感がない風貌のキミは、この縁側とよく似合っていた。

溶けて崩れ始めたアイスを一気に頬張って、スイカを一切れ手に持つ。合わせるように、キミもスイカを持って、一口囓る。シャリ、という音が心地いい。

「もう帰るんでしょ?」

「うん」

別れは毎年のことだった。だから、特別悲しむことはない。キミも東京に来ればいいのに、とボクは言った。去年も言ったし、一昨年も言った。キミは決まって、行けるといいね、と答える。

「祭り、一緒に行かない?」とボクは言った。「意地悪ね」とキミは言った。「私はここから出られないのに」

シャリ、という音を最後に、気付けばキミはもういなかった。また来年、お盆休みに。